利尻山

★高齢者の仏教    「バラモン教」を学ぶ 

バラモン教

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・お釈迦様が誕生した紀元前400年代のインドの宗教は『バラモン教』の時代でした。
・お釈迦様も悟りを開くまでは、バラモン教の修業僧です。

・インドの宗教は、現在は『ヒンドゥー教』ですが、ヒンドゥー教は、四世紀頃にインド各地の民衆宗教をバラモン教の中に取り入れた宗教で、骨格は「バラモン教」です。

仏教を知るためには、この「バラモン教」のことを理解することが大切です。

・遙か昔の紀元前24世紀~前17世紀頃、インドのインダス河流域では古代インダス文明が栄えていました。

・紀元前18世紀~前11世紀頃に、中央アジアに住んでいた「アーリア人」が、インダス河流域に南下し、やがて東のインド平原にも侵入して先住民族を征服します。

・その後侵入者「アーリア人」は、ガンジス河流域の豊かな平原に定住し、先住民族を奴隷化して農耕社会をきずきます。
・その時に、取り入れられた宗教が「バラモン教」です。


・バラモン教とは、古代インダス文明の先住民族が、神から授かったという『ヴェーダ』の聖典をもとに創られた宗教です。

・この宗教は「人生の目的は神に祈り、神と共に生きること」でした。
・神からの贈り物『ヴェーダ』を聖典として「天・地・太陽・風・火・水」などを崇拝する神格化した宗教です。


・「ヴェ-ダ」とは「知識」という意味です。「ヴェ-ダ」はインド最古の文献です。

・侵入者アーリア人は、この古代バラモン教を巧みに利用し、先住民族を支配するための支配構造をつくりました。その一つが「カースト制」です。


・カースト制とは、人が生まれた時に4つの階級に区分けし、その階級によってその人の一生の身分階級が決まるという制度です。
(*父親の階級がバラモン階級なら子どもはバラモン、シュードラ階級なら子どもはシュードラ階級となる。)

・この社会では、絶対的な支配者階級が 「バラモン(司祭)」階級です。
・その階級は、侵入者アーリア人たちが独占しました。
・最下層の「シュードラ」は、先住民族たちで奴隷階級です。

・このバラモン教の社会では、異なる階級間の結婚は認められていません。
・そのため先住民シュ-ドラ達は(奴隷階級)、子孫末代まで、この奴隷階級から逃れることは出来ません。
・この仕組みは、現代でも続いています。

■・なぜ、このような身分差別社会が、昔からインドで認められているのでしょうか。


 (りんねてんしょう)

【その理由は】
・古代バラモン教の教えに、『輪廻転生』の思想があります。

・「輪廻転生」とは、人は死んだら魂は次の来世で新しい生命に転生し生まれ変る。
それを人の生死は、繰り返し永遠に行われている(輪廻)という思想です。

・そのため人々は、来世で悲惨な階級に生まれ変わる事に不安を抱き、現世の不幸を嘆かずに善行を積み、来世での幸せを求めて日々努力して生きています。

・しかし、この「輪廻転生の宗教思想」を支配者達が利用すれば、支配者にとっては、この思想はとても有意義な宗教思想となります。
・侵入者アーリア人は、この古代バラモン教の「輪廻転生」を支配体制に取り入れました。

・古代バラモン教の思想は、現代では『ヒンドゥー教』として変化しましたがインドでは今も続いています。
・人々は、「輪廻転生」を信じているのです。

・現代のインドでは「カースト制度」は、憲法では認められていません。
・しかしインド人口の80%は「ヒンドゥー教徒」です。この制度は宗教思想として守られていますので、インドの社会制度として定着しています。


・最下層階級に生まれても、前世の行いの悪さで生まれたとされて、社会的矛盾を指摘出来ません。
・実に支配者階級にとって都合の良い思想です。

 (ぼんがいちにょ)

・バラモン教の聖典『ヴェーダ』は、全部で4冊あります。
・まとめて『リグ・ヴェーダ』と言います。
・この聖典の最後の部冊に『ウパニシャッド奥義書(おうぎしょ)があります。
・このウパニシャッドには『梵我一如』の思想が書かれています。

「梵我一如」とは、何なのでしょうか。

・宇宙の創造主「」(ブラフマン)と我々人間の「」(アートマン)が、同一の要素(一如)で、つくられているという思想です。

・全宇宙の全てを司るブラフマンは、全知全能で不滅の神です。
・その神と我々アートマンが同一ならば、人は全知全能の知恵を持ち不滅のものとなります。

・この『ウパニシャッド』には、ブラフマンとアートマンが、同一結合して結びつく『秘法(ひほう)』が書かれています。
・このため「梵我一如」の境地を求めて昔から多くの修行者達が、神との同一化を求めて修行してきました。

・バラモン教も現代のヒンズー教もこの『リグ・ヴェーダ』を聖典としている宗教です。

・そのためインドの人達は、『釈迦』もバラモン僧として修行し『梵我一如』の境地に達し、悟りを得て仏陀になったと言われています。


■・しかし、バラモン教の宗教観とお釈迦様の宗教観には大きな違いがあります。

・お釈迦様は、激しい身分差別と男尊女卑を否定して、すべての人は『平等』であると説いています。
・バラモン教の世界は「神の創造したもの」に対して、お釈迦様は、世界は「因果の道理」に従って始まり、そして終りがあると説いています。

・人々の運命は「神への供養の儀式」で決まるとバラモン教は説いていますが、お釈迦様は、人の運命は「自分の行い」によって決まると説いています。

・バラモン教は、仏教が広まった時は、一時衰退しましたが、その後四世紀頃に「ヒンドゥー教」としてグプタ王朝によって復興されました。・・・支配者にとって「階級制度」は都合が良いためです。

・バラモン教は「時代の変化で変わる特定の民族宗教」ですが、お釈迦様の仏教は「時代を超えても変わらない宗教」です。民族が違っても、いつの時代でも、通用する普遍性のある宗教です。

・そのため、東南アジアや東アジアの他民族にも広がり「世界宗教」となりました。


    
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