利尻山

★高齢者の仏教    「仏遺教経」

入滅

■・仏遺教経とは

・「仏遺教経」は、その名の示すとおり、釈迦が八十年のご生涯を終えられるにあたって、最後に示された、いわば遺言とも言うべき教典です。

・「仏遺教経」は、正式には「仏垂般涅槃略説教誡教」といいますが、「遺教経」とか、単に「遺経」とも通称されています。

・「涅槃経」という経典がありますが、この経典は、釈迦「最後の旅」の旅の出来事を記録した経典です。
・「仏遺教経」とは、涅槃に入った釈迦の「最後の言葉」を記録した経典です。

・釈迦のご入滅が近いことを伝え聞いた仏弟子達は、急いでクシナガラの釈迦のもとへ向いました。
・すでに釈迦は沙羅双樹の下に、北枕に右わきを下にして、西に向かって静かに横になられておりました。
時は、紀元前486年2月15日、満月の夜のことでした。

・釈迦は宇宙の真理をさとり、その道理に適った生き方こそが、人が求める『幸福への道』だと示しました。
・その仏法は、あらゆる存在は「一切皆空」であるが故に「無常で無我」であるという厳然たる事実から出発しています。
・そして、人が避けて通れない四苦八苦の現実も「八正道の実践」によって必ずや安楽への道に通じていると説かれているのです。

・釈迦は、48年間におよぶ伝導布教の中で5,040余巻の経と84,000法門を説かれましたが、その悲願はただひとつ、人類の〝幸福に他ならないのです。

・その最後の教えがこの「仏遺教経」に集約されていると言えます。
・まさに釈尊が人類のために遺された最後の教えで最後の遺教です。

・この経文の中心的教誡が「八大人覚」、つまり大人(修業僧)が、覚知し行うべき八種の法門の教えです。

読み方】

「仏遺教経」(ぶつゆいきょうぎょう)
「仏垂般涅槃略説教誡教」(ぶっし はつねはんりゃくせつきょうかいきょう)
「涅槃経」  (ねはんきょう)
「沙羅双樹」 (さらそうじゅ)
「八大人覚」(はちだいにんがく)

■・八大人覚とは

・釈迦の入滅時、仏弟子に「八大人覚」を自覚して修行をせよと話された。
・「八大人覚」は、大人(修行者)たちの八つの心構えという意味です。

・この教えは、在家の仏弟子への教えではなく、涅槃を求めて修業する仏弟子(修行者)達への修業の心構えとしての諭されたのです。
・それで「八大人覚」は、修業者達の最も大切な仏の修業項目といえます。


【八つの修業者の心構え】
少 欲(しょうよく) :欲求を抑えて修業する。
知 足(ちそく)   :他と比べないで与えられた環境に感謝をし修業をする。
遠 離(とおざかる) :騒がしさを離れ静かな場所で修業をする。
精 進(しょうじん) :怠ることなく、日々努力を重ねて修行をする。
正 念(しょうねん) :正法を信じ、信念を持って修業をする。
禅 定(ぜんじょう) :心静かに坐り、事象を見つめ直し瞑想して修業をする。
智 慧(ちえ)    :正しい智慧の目で、この世界を観る心を育てる修業をする。
不戯論(ふけろん)  :無益な議論や無益な言葉を慎み、なすべきことを修業する。


【その意味の解釈】

「少欲」とは
・欲を少なくして修業せよという教えです。
・欲を無くせよとは説いていませんが、お釈迦様は欲の多い人は、求めることも多く苦悩も大きい。
・欲を少なくすれば、その分こころの安らぎが得られると説かれます。

「知足」とは
・現在の置かれた環境に不満をいわず、これで十分ですと感謝をする心を持つことの教えです。
・この心が無いといつまでも欲望に引きづりまわされて、結局哀れなことになってしまいます。
・足ることを知るという心構えの教えです。

「遠離(寂静)」とは
・情報の多すぎる世界に身を置かず、静かな場所で修業せよという教えです。
・日本の「道元」はこの教えを守り、福井の山の中に永平寺の修業の場を造りました。
・現代は、情報過多と言われる時代です。そのため判断に混乱も迷いも生じます。
・情報は少なくてもいけませんが、それから離れて静な中で自己を見つめることも大切です。

「精進」とは
・怠ることなく、日々努力を重ねて修業せよという教えです。
・これはお釈迦様の教えの一番の特色と言ってもいいでしょう。
・何事も取り組むものには、全霊前進で精進するという教えです。

「正念」とは
・正しい教えを心に念じ自分の信念を定め、忘れないで進むめという教えです。
・信念を念じ続け欲望の誘惑に負けてないで生きることの大切さを示しています。

「禅定」とは
・禅定とは坐禅のことです。
・坐禅して心を散らさず心を静めて瞑想することの大切さを説いています。

・「智慧」とは
・正しい智慧こそは、苦悩の海を渡る船であり暗黒の世の灯火です。
・悪知恵では何もなりません。
・かたよらず、こだわらず、とらわれず、この世界をみることの出来る智慧の心を育て育むことの大切さを説いています。

「不戯論」とは
・無益な議論や無益な言葉を慎み、なすべき事に真摯に取り組むことが大切さをお説きになりました。

・これらお釈迦様の「八つの修行者の心構え」は、現代の私たちにも大変役立つ有意義な教えでもあります。

・お釈迦様は、参列していた仏弟子達に「修行僧たちよ。お前たちに告げよう、『もろもろの事象は過ぎ去るものである。怠ることなく精進せよ。』」と言い残し、入滅しました。

今から約2500年前の、紀元前486年2月15日、満月の夜のことでした。

    
  10 0 1