利尻山

 ☆29回 福祉士試験 解説 虎猫さんのBlogから

問題84   【正解4】

×1.「政治・行政上の目的をもった調査」を一般的にはセンサス(census)と呼び、その最も典型的なものとして国勢調査をあげることができる。
センサスは、社会調査の歴史的系譜のなかでは最も古い歴史を有するものである。

×2.研究者が個人で行うフィールドワークも、社会調査に含まれます。

×3.例えば、小林(1981)2)は、社会調査の歴史を説明するにあたって紀元前3050年頃エジプトにおいて行われたピラミッド建設のための数量調査や紀元前2300年頃にはすでに行われていた中国の人口調査、紀元前1500年頃に行われたイスラエル人の人口調査等々の存在を指摘している。

◎4.「社会的な問題を解決する目的をもって行われるもの」である社会踏査(social survey)

×5.社会調査は必ずしも統計調査に限られるものでなく、社会調査には、一定の地域社会や小集団、個人に対する参与観察、非参与観察、面接を用いた調査と、それらの記録とその分析という方法を用いて社会事象に関する認識を得るために行われるものまで含んでいるというのが一般的な理解である。


問題85   【正解1】

◎1.適切です。仮説と異なるデータを除外しては調査の意味がありません。

×2.回答を強制することはできません。

×3.調査者が期待する回答をすれば謝礼金額が上がる、というような仕組みであれば問題がありますが、回答の内容に関わらず調査に協力することについての謝礼を支払うことは問題ありません。むしろ、貴重な時間を割いて協力してくれているのですから、謝礼を出すのが望ましいです。大学生で、調査(実験)に協力して500円程度の謝礼を受け取ったことがある方もいるのではないでしょうか。選択肢3は適切ではありません。

×4.調査協力依頼を文書でしなくてはならないという制限はありません。選択肢4は適切ではありません。

×5.日本社会福祉士会作成の社会福祉士の倫理綱領および行動規範には、調査や研究に関する専門職としての倫理責任についての項目があります。

◆専門職としての倫理責任
①(調査・研究)社会福祉士は、すべての調査・研究過程で利用者の人権を尊重し、倫理性を確保する。
②調査・研究
社会福祉士は、社会福祉に関する調査研究を行い、結果を公表する場合、その目的を明らかにし、利用者等の不利益にならないよう最大限の配慮をしなければならない。
③社会福祉士は、事例研究にケースを提供する場合、人物を特定できないように配慮し、その関係者に対し事前に承認を得なければならない。


問題86   【正解2】

×1.「母集団の規模にかかわらず」という部分が正しくない。
◎2.<系統抽出の手順>
1.抽出間隔(インターバル)を決める
2.無作為開始点(ランダム・スタート・ポイント)を決める
3.無作為開始点から抽出間隔ごとに、要素を所定数に達するまで抽出する
母集団に通し番号を打って、抽出間隔と無作為開始点を決めて抽出していきます。このやり方の場合、例えば抽出台帳が男女男女男女…という順の規則性のあるリストだった場合、抽出間隔を10、無作為開始点を3とすれば、抽出されるのは3、13、23、33、43…という具合に奇数番号のみで、「標本は全て男」という偏った状態になります。

×3.母集団が、あらかじめ割合が知られているいくつかの層(男性と女性、あるいは10代、20代といった年齢階級別の層)に分けられる場合には、それらの層ごとに標本の無作為抽出を行う「層化抽出法(「層別抽出法」とも呼ばれる)」を行うとよい。
あらかじめ分かっている母集団の特性を利用するのが有効な場合もあります。

×4.標本誤差とは母集団のすべてを調査しないで、一部の標本を無作為抽出して調査した結果にともなう誤差である。つまり全数調査には存在せず、標本調査の持つ誤差である。

×5.機縁法snowball sampling
非確率抽出法の1つ。知人の紹介に頼って標本を集める方法。縁故法、紹介法ともいう。特に紹介をつないでいく方法を雪だるま法(snow-ball sampling)という。
機縁法は「非」確率抽出ですから、選択肢5は誤りです。
◆なお、スノーボールサンプリングは「調査対象者に次の調査対象者を紹介してもらう」という点では機縁法の性質をもちますが、「最初の調査対象者は無作為抽出で選ぶ」としている資料がちらほらみられ、機縁法とスノーボールサンプリングは全く同じものとはいえないようです。


問題87   【正解5】

×1.「回答者が十分に時間をかけて回答することができる」というのは正しいですが、質問項目数の上限がないわけではありません。あまりに質問項目が多いと回答者は嫌になってしまい、回答をやめたり(回答が回収できない)、適当な回答を書いたり(正確なデータが得られない)ということがあり得ます。

×2.集合調査とは、特定の人が集まる場所で調査票を配り、その場で回答してもらい、回収するやり方です。学校や、職場、会合でのアンケートをイメージするとよいでしょう。その場での回答なので回収率が高いというメリットがありますが、特定の人が集まっているので、標本には代表性の偏りがあります。

×3.電話調査は、面倒だということで回答しない人も多く、回収率は高くありません。

×4.「調査票を配布したその場で回答がなされない」というのは正しいですが、回収率が他の方法と比べて低いわけではありません。デメリットとしては、回収したデータが本当に調査対象者が記入したものかどうか確認できないことが挙げられます。

◎5.インターネット上で調査対象者を公募すると、まず「インターネットが使える環境・技能があり」「回答しようという意思があり」「回答する時間がとれる」人しか調査対象者になり得ません。したがって、インターネットが使えない人や、忙しすぎて時間がとれない人のデータは集まらず、代表性の偏りが生じます。


問題88   【正解1】

◎1.正しいです。文章だとわかりづらいので、具体的な数字で考えてみましょう。「セルの度数の比がすべての行で等しい」クロス集計表(架空のデータです)を用意しました。

1行目(X町の行)のセルの度数の比は120:60:90:30=4:2:3:1です。
2行目(Y町の行)のセルの度数の比は40:20:30:10=4:2:3:1です。
すなわち、セルの度数の比はすべての行で等しい(すべて4:2:3:1)ですね。

これがどういうことかというと、X町の人でもY町の人でも、全体の40%の人がA型、20%の人がB型、30%の人がO型、10%の人がAB型だという構成割合が同じだということです。もしこういうデータが出てきたら、このクロス集計表の2変数「住んでいる場所」と「血液型」には関連がないと考えられます。

×2.上記の同じ表で、X町の行パーセントは、A型40%、B型20%、O型30%、AB型10%です。X町の人のうちでそれぞれの血液型の人の割合を示しています。一方、A型の列パーセントは、X町の人75%、Y町の人25%で、A型の人のうちでX町の人とY町の人の割合を示しています。行パーセントと列パーセントでは、得られる情報が違います。

×3.上記の表は、「住んでいる場所」と「血液型」という2変数の関連をみていますが、さらに「性別」も加えた3変数の表も作ることができます。例えば次のような表です(架空のデータです)。

×4.度数分布表における相対度数とは、各カテゴリーの値を、度数を合計した値で割って算出したものです。

×5.連続変数でも、度数分布表を作成することはできます。


問題89   【正解3】

◎3.
×1、5は誤りです。

◆選択肢1、3、5について
ケーススタディ(事例研究)(casestudy)
解決すべき問題や課題を抱えるケース(人・集団・地域)への援助を,さまざまな角度から検討し,そこからケースを取り巻く状況や抱える問題の原因,支援のあり方と,必要な社会資源等を明らかにしていく研究手法。

×2.事例研究は、質的研究の一つと位置づけられている。しかし、評価目的の研究では、一つの事例であっても量的に研究する方法があり、それを単一事例実験計画法(シングル・システム・デザイン)という。
量的データを対象とすることもありますので、選択肢2は誤りです。

×4.事例研究では、さまざまな情報源からデータを収集し、統合して活用する。データは、主として観察、面接、文書などから収集することが多いが、人が五感で感じるものはすべて記述することでデータとして取り扱うことができる。

◆出題は「社会調査の基礎」でしたが、教科書で事例研究のことが載っていたのは「相談援助の理論と方法」でした。


問題90   【正解5】

×1.KJ法では、発言を一字一句正確に記録する必要はありません。

×2.住民座談会の参加者がブレインストーミングと整理を行うので、ソーシャルワークの専門用語を用いて記録すると、参加者の中には分かりにくいと感じる人もいるかもしれません。

×3.KJ法では、1枚の付箋紙(カード)に1つの項目を書き、関連のある付箋紙(カード)を徐々にまとめてグループにしていきます。関連のあるグループどうしをまとめてさらに大きいグループにすることはありますが、グループを小分けにすることはありません。

×4.1枚だけで残る付箋紙(カード)があってもかまいませんし、グループを構成する付箋紙(カード)の枚数は同じでなくてかまいません。関連のある付箋紙(カード)をまとめることが重要で、関連がないのにグループに含めることはしません。

◎5.適切です。
◆KJ法(-ほう)は、文化人類学者の川喜田二郎(東京工業大学名誉教授)がデータをまとめるために考案した手法である。